その日、私ははっきりと夢を見た。


悠真がイスに座って頭を抱えている。なんでそんなことしてるのだろう。不思議に思っても声を出すことはできなかった。

だけど、そのときの彼の言葉ははっきりと聞き取れた。


「橙子……」




そこで目が覚めた。今でも鮮明に覚えている。

なんであんな夢を見たんだろう……やっぱり自分は死んだのかもしれない。1度そう感じてしまえば、そう簡単にその疑惑が頭から離れない。


無理だよ……耐えられない。




「橙子さん、ちょっといいですか?」


部屋に入ってきたのは、康樹君だった。同じ境遇の彼は少しだけ浮かない顔をしている。


「いいよ。どうしたの?」

「橙子さんも思ってるんでしょ?自分が死んでるかもしんないって」


何も言わないが、それは肯定を意味している。康樹君はそれ以上つっこんだことを訊かなかった。


「もう1回行ってみませんか?先生んちの近くに」


私は頷いて承諾した。