それから私達2人は無言だった。お腹がすいたのでファーストフードの店に立ち寄ったときも会話らしいものはなかった。


嫌な予感がしていた。悪い夢でも見ているのかもしれない。

……いや、悪い現実から目をそらして良い夢を見ているのかもしれない。


「まだ俺たちだって決まったわけじゃないです」


ホットコーヒーをかき混ぜながら、康樹君がぽつりと呟いた。


「だって死人が出たんなら、いくらなんでも新聞に載ります。だけど、それっぽいもんはなかった」

「そ、そうだね……」


そう思わないとやっていけない。





いつのまにか天気は曇り始めていた。ひょっとしたら雨が降るかもしれない。

雨――そういえば、結婚前日も確か雨が降っていたような…………


キキィィィ

そのとき、ものすごいブレーキ音がした。驚いて店の窓から外を見ると、黒い車が横断歩道を乗り越えて停車しているのが見えた。


だけど、私も康樹君もそれをじっくり見ている場合ではなかった。

何かを思い出しかけた。思い出したくない何かを…………