映画が終わってからは私も奈美も適当に辺りをブラついていた。
私はこのチャンスを待っていた。ずっと言おうと思っていたことを言う決心がついた。
「竹山さん」
「え、何?」
きょとんとした顔で奈美が振り返る。
心の中で私は自分に気合を入れた。男口調を意識する。
「実は今、自分の中で1つの問題を抱えてるんだ。それが解決するまでは誰かとつきあうことは考えられない……ごめん」
「そっ……か」
「でも」
私は慌てて付け足す。
「きっといつか……俺のほうから告白するかもしんない。そのときは笑わないで聞いてほしいんだ」
それは昨日の夜に康樹君に確認したことだった。私が康樹君に本気で奈美を好きか訊いてみたところ、彼は迷うことなく真剣な表情で頷いた。それを見て、今日こう言うと康樹君の了承を得たのだ。
奈美のためにも、早く元の体に戻りたいと心から思った。