あの日は普通にクッキーの散歩に出かけて、普通に歩いて、普通に……?


「湯澤くん、寒くないか?温かいものでも飲もうか」

「あ、はい」


俺と先生は近くに喫茶店に入った。橙子さんたちは映画館に入っていったので当分は出てこないだろう。


俺はホットコーヒーを頼んだ。それにいっぱいの砂糖とミルクを入れるが、先生も同じものを頼んでもブラックで飲んでいる。


「先生は大人ですね」

「そうか?結構子供っぽいってよく言われるぞ」


はにかんだように笑いながら、先生はコーヒーをすする。


「湯澤君だってその年でずいぶんしっかりしてると思うよ。俺が中学生のときなんかゲームで遊んでたことしか思い出せない」

「俺は……全然そんなんじゃないんです」


前の学校にいたときのことを思い出した。

中学1年生のとき、明らかに自分のせいなのに俺は自分は悪くないと頑なに否定したことがあった。そのときからだ。自分の周囲から友達がいなくなっていったのは。