いざ悠真の部屋の前に来ると、やっぱり緊張してきた。だけど、会いたいという気持ちは変わらない。

「悠真ー、入るぞー」

相手の返事を待つことなく倉田は部屋のドアを開ける。悠真の匂いがした。


「お前休みだからってゴロゴロしすぎだろ。おら、起きろ起きろ」

「なんだよ……いきなりだなー」

ベッドから起き上がったのは、正真正銘自分の婚約者、市川悠真だった。それだけで私は泣きたくなってしまった。

悠真、よかった。元気そうでよかった…………


「あれ、その子どうしたの?まさか誘拐、とか?」

悠真の視線が私に向けられ、思わずどきっとしてしまった。

もろに目が合ってしまい、私は顔面が真っ赤になってしまうのをなんとか抑えた。

「なわけねぇだろ。親戚の子だ」

倉田は図々しくベッドに座り込んだ。


「親戚の子なんだ。名前なんていうの?」

屈託のない笑みで訊ねる悠真は全然変わっていない。