ついにこのときが来た。私はどこかでこの日が来ることを恐れ、そして望んでいた。
悠真はもちろん私など見ていない。私の体をした康樹君を見ている。
「悠真」
今は生徒と先生という関係だが、私はためらうことなくその名を呼んだ。
「その人は橙子じゃない……私が吉井橙子だよ」
その名前に反応したのか、悠真の瞳がこっちに向けられる。視界の隅で康樹君がこくこくと頷いているのが見えた
「ある事情で体が入れ替わっちゃったの。そこにいる私の体には湯澤康樹君がいる」
もちろん信じられる話ではないことはわかっている。だけど、こうなった以上本当のことを話すしかなかった。
覚えている限り全てのことを話した。その間、悠真は黙って聞いていた。
話し終えても、悠真の反応はなかった。当たり前だろう。誰だってそんな話信じられない。