**悠真 side**


学生の間に結婚という言葉を意識したことはなかったが、社会人になって初めて考えるようになった。


23歳新米教師の俺は、友人の結婚式に参加していた。中学のときは最も色恋に興味のなかった男が1番最初に結婚したのだ。



「俺は倉田が最初だと思ったんだけどな」


新郎の坂口が正直にそう言った。俺は、倉田が中学のときに何人かの女の子とつきあっていたことを思い出した。


「ありえねぇだろ。自分じゃぜってー結婚できないって思うし」

「そうでもないだろ。市川は?今彼女いるの?」


「えっ?」


別のことを考えていた俺は驚いて顔を上げた。


「あ……ごめん。聞いてなかった」

「悠真はー、最近彼女と濃厚な夜を過ごしてるのでそれどころじゃないんだよ」


倉田が冗談でそんなことを言い、坂口がへ〜っとのってくる。


「やるじゃん、市川!」

「ちがっ!倉田が本当のこと言うわけないだろ!」


親友だからこそ言える言葉だ。


「照れんな照れんな。この間俺が電話したとき最中だったなんて誰にも言わねぇから安心しな?」

「倉田、お前もう帰れ!」