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1ヶ月ぶりに訪れた婚約者の家はなんだか寂しそうに見えた。

倉田にお願いして一緒に来てもらい、私はインターホンを押してみた。



『はい』

出たのは以前にも聞いたことのある、婚約者の母親の声。


「こんちはー。倉田です」

『倉田君ね。どうぞあがって』


ドアを開けて歓迎してくれたのは、見間違えようのないお義母さんになる予定だった人だ。
私と目が合ったが、もちろん気づいてもらえることはなかった。自分はもう全く顔の違う少年になってしまったのだから。

お義母さん、少し痩せたな……


「悠真なら2階にいるわ」

「うん。あ、こいつ俺の親戚の子だからよろしくね」


軽い調子で倉田は答えた。




「…………私がいなくなったことで、みんなにすごく迷惑かけちゃったんだね……」


階段の途中でひとり言のように呟く。


「前日なだけマシだろ。当日だったらもっと面倒なことになってたな」


倉田はひょうひょうと答えた。