私の言葉を無視して、悠真はチョークを置いて手を払う。


「……橙子のバカ、アホ、ボケ…………」


“大好き”


決まりの悪そうな顔で、頷く悠真。

信じられなかった。もしかして、もしかして?


「えええぇぇっ……」


変な叫び声をあげて私は後ずさったが、やがて壁にぶつかってしまった。


「なんで?片想いだって言ってたのに」

「まさか両想いだとは思わないだろ」

「い、言ってよ……」


情けない声が教室に響く。


「今言った」


けろりと悠真は言い放った。


これが2人がつきあいだした瞬間だった。
この後、下駄箱というなんだかむさくるしい場所で初めてのキスをした。