「橙子さん、どこに行くんですか?」


奈美とのさっきのやり取りを聞いていたらしい。さっきから康樹君はしつこく私にいろいろと訊ねてくる。


「だーかーら、倉田の家だって言ってるじゃん」

「俺も行きます」


今日の倉田のバイトは夕方だから、午前中に会いに行こうと思っていた。彼に昨日のことを訊いてくれたかどうか確かめるためだ。

今さらになって、倉田の電話番号を聞いておけばよかったと後悔していた。


「来てもいいけど、ちゃんと変装してよ」

「わかってます」



私達2人は倉田の家に行ったが、インターホンを押しても応答がなかった。


「おっかしーなぁ……まだ寝てんのかな」

「どっかに出かけてるのかも」


スマホがあったら便利だなと私が思っているとき、好奇心でなんとなく玄関の扉を開けようとしてみた。すると、


「開いてる」