家に帰ってすぐに、私は悠真の家の近くで見た血の跡らしきものの存在について話してみた。それに対する康樹君の反応は意外にも薄いものだった。
「事故った記憶なんてないけど」
「それはそうだけど……もしかしたら事故のショックで忘れてるだけかもしれないじゃん!」
熱を込めて話すと、「そこなんだよね」と康樹君が真剣な顔つきになる。
「クッキーがちゃんと家に帰ってきてた」
「どういう意味?」
「俺が覚えてない空白の時間、クッキーは1人で家に帰ってきたって母さんが言ってた。俺は庭で寝てたのに」
ようやく康樹君が何を言おうとしているかがわかった。
「何か忘れてるみたいだね。私も台所にいたところまでは覚えてるんだけど」
事故に遭ったとしたら、自分が道路に出たということになる。なんのために出たのかわからない。
思い出すにはまだ何かパーツが足らないらしい。