**倉田 side**
事故ったかもしれないと言う吉井の言葉を考えながら、俺はその場にしばらく立っていた。
「倉田!ごめん。待たせた」
そこに自転車に乗った悠真が現れた。俺が今日ここに来たのは悠真に呼ばれたからだ。
「よぉ。人呼んどいてのんきに買い物かよ」
「悪い。特売日だったから」
どこの主婦だ。
ツッコミどころは満載だったが、あえて無視して俺は歩き出す。そして、なんでもないように話し出した。
「なー悠真。1ヶ月くらい前にここで事故とかなかったかー?」
「事故?さぁ、聞いたことないけど」
やっぱりな。俺はなんとなくわかっていた返答に特に驚くことはなかった。
「俺も訊きたいことがあるんだ」
振り返ると、悠真が真面目な表情でこっちを見ているのがわかった。
「俺の精神状態ってイカれてないよな?」
「なに急に」
「いや……橙子に似た人が俺のクラスの女の子に告ってたから」


