「え……っとこの人は……」

「恋人なの……?」


ぽつりと呟いたのは、他ならぬ彼女だった。


「湯澤君にはもう好きな人がいたんだね……私なんか告白しても無駄だったんだ」

「ちっ違う!この人は……知り合いのお兄さんの婚約者で……竹山さんが思うような人じゃないって!」


橙子さんの弁解に女の子はしゅんとなっていた表情を少しだけ明るくさせた。同時にそれが恋する乙女の表情にも変わる。


もしかして……この子が橙子さんの言ってた俺のことを好きな人か?


写真で見るのとは違う。余計にそのかわいさが際立っていた。

だから思わず言ってしまった。


「俺とつきあってください!!」


橙子さんの体で、男口調で。見事にヘンタイ女の出来上がりだ。

しかも、その場面を他に見ていた人物がいたのだ。



「…………あれ、湯澤くんに竹山さん。何やってるの?」


現れたのは俺も学級写真で知っている、担任の市川悠真だった。彼は生徒2人に問いかけながらもまっすぐに俺のことを見ていた。


自分の婚約者と2ヶ月ぶりに対面したのだ…………