**康樹 side**
俺は自分が通うはずだった中学校まで来ていた。担任が橙子さんの婚約者だと話は聞いていたが、好奇心でその人物と竹山奈美を見に来たのだ。
一応変装はしてきた。
家にあった眼鏡に、母に協力してもらって髪型も変えてみた。野球帽を深くかぶってるし、たぶんバレないだろう。
それに最終手段もある。
「よしっ!」
気合だけ十分に、俺は歩き出した。
しかし、制服でない人物が歩いているのはただでさえ目立つ。昇降口ですでに俺はダウンしてしまった。
「康樹君!」
ちょうどいいところに助け舟がやって来た。俺はのんきに手を振って橙子さんを出迎える。
「なんでこんな所にいるの!?」
「家でじっとしているのに飽きちゃって」
「だからって見つかったらマズいよ……もし知ってる人が来たら……」
と、そのときだ。下駄箱に1人の少女が現れた。
一瞬マズいと思ったが、俺の姿を見られて困る人ではない。なるべく平静を装っていると橙子さんが話し出した。