康樹君の通う中学校は、私にとっても母校だった。 だけど、当時いた先生はほとんどがいなくなっていて、私の苦手としていた体育の女の先生だけは一目見ただけでわかった。 「こっちだよ、湯澤康樹くん」 悠真に呼ばれて着いていく。 「緊張しなくても大丈夫だよ。みんな面白い人ばかりだから」 「あ、あの……」 「ん?」 私は悠真の左手薬指を見ていたけど、やっぱり何も言えなくて首を振るしかなかった。 「じゃあ行こうか」 何も知ることのない悠真は、私を自分のクラスへと案内していった。