倉田の家の近所に最近新しい家が建ったらしく、そこに住む人が以前挨拶に来たことがあるそうだ。そのときに確か「湯澤」だと言っていたような気がする……らしい。

まだ湯澤康樹君の住む家かどうかもわからない話だ。


それなのに、ピーンポーンと倉田はためらうことなく呼び鈴を押した。



『はい』

「こんにちは。あの、湯澤康樹君が道に迷ってたみたいなんで連れてきました」

『え!もしかして、女性の方ではありませんか!?』


なんだか話がおかしい。まるで私の状況を知っているかのようだ。

玄関の扉が開くと、出てきたのはまだ若い女の人だった。とても綺麗な人だ。


「やっぱり……康樹!」


そんな人がいきなり初対面の私に抱きついてきた。


「よかった!このまま見つからなかったらどうしようかと思ったわ」

「えっえっ!?」