「うまい、つきたておもち……おもち」

和翔はやわらかいおもちをじーっとみて三つたいらげた

「和くん、何考えてるの?」

「えーと、おもちといえば……莉乃のおっ……んぐ」

莉乃は和翔の口を手でふさいだ

「静かに食べて下さい!」

「はい……」

もう、私の胸をおもちと間違えたこと思い出すなんて……寝起き注意だな




夜、和翔の母親がやってきた

「あれ、起きてる」

「莉乃が優しく起こしてくれたから」

「私だって最初は優しく起こしますぅ」

「父さんは?」

「兄ちゃんが明日まで練習だからもう一泊して兄ちゃんを一緒に連れて帰る、都ちゃんもお父さんは?」

「会社の忘年会、飲もうよ」

「うん」

「乾杯~」

「お兄さん観に来てくれたの?」

「うん、写真撮ったよ見る?」

兄弟のツーショットが映っていた

「優しそう、夏休みすぐ帰っちゃって会えなかったからね」

「優しいよ、性格もおっとりしてるし父さんに似てる、俺は母さん似」

「でも青雲で頑張ったんだからそんなに大人しくないんじゃないの?慶ちゃん」

「兄ちゃんだったから逆に青雲でやれたのかもね、言われるままに頑張ってまあ全国行ったけど、おかげさまで大学もバスケでとってもらえてそこは感謝してる、でもガンガン怒ればいいってものじゃないんだよね、選手が考えてプレーしなきゃ、その点岡島は進学校だからみんな言ったことすぐ理解してくれるわ、青雲が悪いっていうんじゃないけどその子に合った指導の仕方があると思うだけよ」


「お母さん、よく見ててメモもとってましたよね」

「和翔だったら監督にあれだけ言われたらキレてるかもね(笑)」

「そんなもの?」

「まあ、よく怒鳴る監督だから」

「ごちそうさま、理人ゲームしようぜ」

「うん」

二人は理人の部屋に上がった

「逃げた(笑)」





12月31日大晦日、莉乃と和翔は近くの神社へ初詣に出かける

「私ね夜行くの初めて、りーくんが寝てしまうからお婆ちゃんちにいく前にいつも行ってる」

「店がたくさん出てるだろ」

「うん何か食べたい」

「何食う?」

「たこ焼き~」

「莉乃ってたこ焼き好きなのな、夏も食べてたし、やっぱり丸いものにひきよせられるとか……」

「和くん!」

「はい、ごめんなさい(笑)」



二人は座ってたこ焼きを食べていた

「あー、莉乃じゃん久しぶり、卒業以来だね松島も……二人は同じ高校だったっけ」

中学の同級生の咲季(さき)が声をかけてきた

「うん」

「二人で来てるのは付き合いだしたの?」

莉乃は頷いた

「咲季は誰と来たの?私の知ってる人?」

「智津と来たよ、今トイレ行った、またバスケ部で集まりたいね」

「そうだね、咲季は高校でバスケしてるの?」

「してないんだー、バイトばっかりしてるよ(笑)」

智津が近づいてきた

「莉乃、……和翔も」

和翔?呼び捨て……
和翔の方をみると下向いてたこ焼きを食べていた

「智津、二人付き合ってるんだって」

「そう……お邪魔だよ行こう」

智津はスタスタと咲季を引っ張って歩いて行った

「あっ、じゃあまたね」

咲季は二人に手をふった



二人はしばらく沈黙の後、莉乃が聞いた

「智津と何かあった?」

「昔付き合ってた……」

和翔はたこ焼きのソースが付いた手をペロッとなめながら答える

「いつ?」

「三年の部活引退してから卒業まで……かな」

「昔じゃないじゃん、どうして別れたの?」

「学校別だったし俺がバスケ頑張りたいって別れた……表向き」

「何?表向きって」

莉乃はウエットティッシュを和翔に渡す

「ありがと」

手を拭いて莉乃に渡す

「束縛ひどくて……いつも会いたいって言うし疲れてきたから……金もないのにどこか行こうってしょっちゅう誘うし、受験生なのにさ、俺は勉強したいのに智津はしないし」

「はぁ、私、智津と会えないね、まあそんなに仲良くはないけど、部活頑張りたいっていったのに一年もたたないのに付き合ってるんだもんね、それも知ってる子と……」

また二人に沈黙が走った