「和くん優勝狙うって言ってたよ」
「篤志も言ってた」
土曜日も勝ち次の日の決勝戦をむかえる
「本当に決勝戦まで来ちゃったね」
「ねえ、でもやっぱり私立の青雲高校、常連高だよね、第一シード」
「うん、あっ和くんのお母さん見かけた、ちょっと行ってくる」
莉乃は走っていく
「お母さん、来ていたんですね」
「莉乃ちゃん、うん全部きてるわよ」
「どうして反対側に?」
「ゴールの方に移動してるから」
「そうだったんですね、じゃあ戻ります」
「あっ莉乃帰ってきた、見て!メンバー」
岡島高校メンバーがベンチから出てきた
「えっ、全員一年生……」
「莉乃~大丈夫なのかな」
絵里は莉乃の腕にしがみついた
和翔、篤志、幸平、亮平、直哉の五人が出てきた
五人はハイタッチをしながら中央に整列する
「おねがいします」
ボールがトスされる
ゴール前に和翔がどんどん責めていく
和翔は母親と時々目を合わせながら、そしてメンバーの位置をチラチラ見ながら相手の動きも予測しながら的確な指示を出していく
試合は接戦で、チームを引っ張っていたのはポイントゲッターのポジションについていた和翔だった
和翔の指示で選手達が動く
シュートの上手い幸平、スリーポイントシュートの確実な亮平と個々の長所を引き出していく
その結果ノーシードの岡島高校は青雲にリードを許すことなく優勝を決めた
五人とベンチにいた五人は試合終了のホイッスルと同時に抱き合った
莉乃と絵里も先輩二人と抱き合って喜ぶ
「やったー」
「すごいね」
「莉乃ちゃん」
和翔と母が声をかけてきた
「お母さん、やりましたね」
「そうね(笑)今日都ちゃん遅くなるんでしょ?」
「はい、りーくんの試合です」
「ご飯食べに行きましょ」
「はい」
嬉しそうに母は体育館から出ていった
「松島くんのお母さんて選手だったんでしょ」
「加奈先輩知ってたんですか?」
「彼から聞いた」
「公演とか指導とか時々行ってるみたいです」
「お兄さんもいるんでしょ」
「はい、県外に」
「バスケ一家だねー」
四人は体育館前で男子の解散を待つ
「あっ出てきたよ」
先輩と別れ四人で駅まで向かう
「和くん何も言ってくれないからさ、まさかの全員一年生とは」
「びっくりしただろ?」
「なんで同じ練習時間なのに……」
「土日の夜とか夏休みも体育館とれたら男子は集まって練習してた」
「えー、篤志夏休みでも水曜日は家に来てたじゃん」
「俺は水曜日は休んでたけど他は行ってたよ、水曜日は絵里とのゆっくりできる時間だからな、我慢はよくないし(笑)」
「まあいつも体育館もとれるって訳じゃないからな」
「和くんも私に言ってもいいじゃん」
莉乃はほっぺたをふくらます
「言ったら来たいって言うだろ?」
「まあ……」
「女子に合わせられないからさ、ごめんな莉乃」
「あっ、じゃあ電車きたからまた連絡するな絵里、チュッ」
「うん」
和翔と莉乃は駅から歩く
「今日お母さんがご飯食べに行こうって」
「莉乃だけ?」
「うん、りーくんの試合で帰るの遅くなるの知ってたみたいで誘ってくれた」
「じゃあ莉乃の家によろうぜ」
二人は莉乃の家に向かう