春四月、県立岡島高校体育館
バスケット部は一年男子六名、女子四名の新入部員が練習の準備をしていた
高島莉乃(たかしまりの)はリモコン式のバスケットゴールを下げる作業を同じ中学校出身の内谷穂乃(うちたにほの)に頼んでリモコンを渡す
ゴールを上げ下げするときには危険なので声をかけることになっているので穂乃が声をかける
「ゴール降ろします」
他の部員が返事をする
「内谷ってかわいいよな、っていうか美人か」
男子部員の厚仁(あつひと)が部員に話す
「声が高くて女の子って感じだよな」
同じく男子部員の篤志(あつし)が賛同する
「いつも楽なことしてるだけじゃん」
部員の松島和翔(まつしまかずと)がボールを運んできて二人と話す
「そうなのか?」
「お前らは本当に周りが見えてないな」
部活終了後、一年は片付けに入り、穂乃はリモコンでゴールを上げた後、モップをかけている他の女子部員二人、静香(しずか)、絵里(えり)に合流して話をしながら一緒に歩く
残り一人の女子部員、莉乃はボールをカゴに片付け得点ボード、タイマーなど小走りで片付ける
「莉乃~、先に部室行ってるよ~」
「はーい、わかった」
莉乃は練習で使ったゼッケンを番号順に並べてたたんでいた
「まだ、道具残ってるぜ、女子のほう」
「高島がするんじゃねえの?女子は役割が決まってるのかな」
「決まってる訳ないじゃん、いつも高島がほとんどしてるよ」
和翔が口をだす
「お前よく見てるな」
篤志が話す
「別に……一緒に準備とか片付けしてたらわかることだよ、他にも気づいてるやついるだろ?」
「気づいてた人~?」
直哉(なおや)、幸平(こうへい)、亮平(りょうへい)の三人が手をあげた
「うわっ!マジか、俺と厚仁だけじゃん」
「お前ら二人は内谷の顔しか見てないんじゃないか(笑)」
幸平にからかわれた
「そんなことはないと思うけど……」
篤志は一人残ってる高島のほうを見た
直哉と幸平も口を開く
「まっ、俺らはなしだな」
「うん、何もしないもんな」
和翔が篤志に言う
「ほら、俺だけじゃないだろ?」
「俺らも戻ろうぜ」
幸平が声をかけた
「俺、体育館の鍵預かって持ってるから先に行っててくれよ」
和翔以外の部員は部室に引き上げていく
「高島、それで最後だろ、しまっておく、もう上がっていいよ」
「えっ、でも」
「いいから、俺、鍵閉めるし」
鍵を莉乃にみせる
「ありがとう」