「その人は、いくつぐらいだったの?」

僕は、きんちょうした声で訊いた。

「確か、三十歳ぐらいだったよ。同じ会社のひとつ年下の女性社員と結婚を決めたのが、二十七歳のときだって言ってたからね。それから二年後、彼女が妊娠したらしんだ」

女神様はその男性と色々な話をしたのか、くわしく僕に教えてくれた。

「でも、彼女が妊娠した数ヶ月後、彼に肺がんが見つかったんだ」

たったひとつの病気が、幸せな家庭を絶望へと変えた。

ーーーーーーどんな人間でも、癌になる可能性はある。けれど、癌を発症する年齢が若すぎた。

その人とは会ったことはないけれど、若くして癌を宣告されたら、未来への生きる希望がその病気ひとつで絶たれた気分になる。