「べつに、色々な人だよ」

「色々な人って?」

僕は眉間にしわを寄せて、女神様に低い声で訊いた。

「働いている人とか、専業主婦の人とか、大学生の人とか。ほんとうに、色々な人が願いをかなえに来るよ」

淡々とした口調で、女神様は僕に説明した。

「けっこうな人が、願いをかなえに来てるんだね」

女神様の言葉を聞いて、僕は率直な思いを口にした。

今まで神社に願いをかなえている人は僕以外に見たことがなかっただけに、これだけの人が願いをかなえていることを知って驚いた。

「他の人は、どんな願いをかなえているの?」

「君と違って、満足感のある願いだよ」

女神様は、嫌味ったらしく言った。

「なにそれ?その言い方だと、僕のかなえている願いは満足感がなくて、他の人は満足感があるような言い方に聞こえるんだけど」

僕は、不満げな顔をした。

「そういうことじゃないけどね。でも、少なくとも、みんな君みたいにそんなたくさんお金は神社に納めてないよ」

女神様は、ぎこちなく笑った。