「決まっている彼女との別れを、お金を使って先に伸ばしているだけだよ。彼女のことが好きなら、悲しい感情はいつか迎えることになる」

眉をを八の字にして、女神様は深いため息をひとつこぼした。

女神様が口にした言葉を耳にした僕は、つぼみと別れるときの姿が脳裏に自然と浮かび上がった。

「それでも……いいんだよ」

そう言った僕だが、なんだか歯切れが悪かった。

つぼみと別れることを想像すると、波のような悲しみがぐっと押し寄せた。秋のせいなのか、周囲から聞こえる鈴虫の鳴き声が悲しく聞こえる。

「ねぇ、僕以外にお金を神社に納めて願いをかなえている人はいるの?」

僕は、賽銭箱に視線を移して訊いた。

「なんで、そんなこと聞くの?」

「いや、ちょっと気になったから」

そう言って僕は、女神様と視線をそらした。

僕の質問にすんなりと答えてくれると思ったが、逆に質問されたことに一瞬とまどった。

「いるよ。君以外にも、神社にお金を納めて願いをかなえてくれる人」

「え、どんな人?」

女神様が言った言葉を聞いて、僕は興味ありげな様子を見せた。