「心は……動いてない……」

女神様に残酷な言葉を突きつけられて、僕は胸がえぐられた気分になった。

南から吹いた夜風が、僕の黒い髪をなびかせた。その風が、なんだかいつもより冷たく感じた。

「もう、その彼女のことはあきらめたら。将来、君のことを心から愛してくれる女性ときっと出会えるよ。その人のためにも、お金は残しておくべきだよ」

「広瀬じゃないと、ダメなんだ!」

大きく息を吸い込んで、僕は叫んだ。思わず口にした言葉が、まるで告白のようだったことに僕の頬がかすかに赤くなった。

女神様が僕のことを心配してくれるのは、ありがたかった。しかし、僕とつぼみの関係を今知った女神様に、とやかく言われたくなかった。

「お金、ほかしているみたいなもんだよ。どんなに君が神社にお金を納めようと、彼女の心は変わらなよ」

「それでもいいんだよ」

僕は、静かにそう言った。

今、つぼみと別れてしまったら、この先、こんなにも人を愛することは僕の人生でもうないと思うから。だから、一日一万円神社に納めるだけで彼女の転校を引き伸ばせるのなら、僕はお金を納めると決めていた。