「その好きな彼女のために、一体今までどれぐらいのお金をあなたは神社に納めたんだろうね?

苦笑しながら、女神様は賽銭箱に視線を移した。

「もう、覚えてないよ」

僕は、そっけなく言った。

学校の教壇の上でつぼみが転校すると言ってから、僕は神社にお金を納め続けた。それ以降、決まっていたつぼみの転校は先に先へと引き伸ばされた。それと同時に、僕のお金は減り続けた。しっかりと計算はしてないが、おそらくもうすでに五十万以上は神社に納めていると思う。

「言っとくけど、お金で愛は買えないよ」

女神様の口から現実味のある言葉を聞いて、僕は納得するしかなかった。

女神様の言ったとおり、お金で愛は買えないだろう。お金で作った関係はすぐに壊れるし、ほんとうの恋愛をしてるわけじゃない。お金を使って、むなしい擬似恋愛をしてるだけだ。

「不思議だね、お金さえ払ったらなんでも買えると思っていたのに」

「さすがにそれは、むりだよ。人の心は、お金では動かないよ。表面上は自分の思いどおりに動いているように見えるけど、心は動いてないよ」

女神様は、首を左右に振って言った。