「すみません、すみません」

先ほど僕の耳に聞こえるのは、母親の謝罪の言葉ばっかりだ。

壁掛け時計の針は午後八時十七分を指しており、秋の夜空にはきれいな星が瞬いていた。

あの後、すぐに担任の小雪先生が教室に入ってきて、僕と尊人は会議室でかんたんな事情聴取をされた。幸い尊人のケガは唇が切れた程度だったのと、彼もやり返したということで、今日はお互いの家にれんらくするということになった。しかし、次同じことをやった場合、停学処分と反省文を書かされることになった。

「申し訳ございません、先生。ごめいわくおかけしまして」

留守電のメッセージに先生から入ってあるのを午後八時に帰宅した母親が気づいて、すぐに折り返して電話をしている。

母親のアルコール依存者は父親からの離婚届が届いても治らず、家に帰って来る時間はおそかった。そのことに、僕は心を悩ませていた。