「俺は、つぼみのことが好きだ。それが、願になんか関係あるか?」

開き直ったのか、尊人はあっさりと自分の想いを僕に伝えた。

尊人の口から出た、〝好き〟という二文字の短い言葉を聞いて、僕は尊人の間に入っていた小さな亀裂がさらに深くなったような気がした。

「……好きになんなよ」

「はぁ?」

僕のボソリと呟いた声が聞き取れなかったのか、尊人は口からほうけた声を漏らした。

「僕のおかげて広瀬と会えているのに、お前が広瀬のことを好きになるなよ」

僕は、声を荒げた。

僕が神社に一万円を納めて女神様に頼んでいるから、つぼみの転校を引き伸ばすことができるのに、尊人が彼女となかよくするのは許せなかった。

「はぁ、なに言ってんだよ?お前、なにもしてないだろ」

尊人は眉を吊り上げて、強い口調で言い返した。

「うるさい!広瀬と今もこうして会えているのは、僕のおかげなんだ。だから、お前が広瀬を好きになる資格なんてないんだ」

「お前。つぼみの彼氏でもないのに、なにそんなわけのわからないことを言ってんだよ!」

わけがわからないような顔をして、尊人ははっきりと正論を口にした。