「お前、ほんとうにお金ないのか?ほんとうは俺におごりたくないから、嘘ついてるじゃないのか?」

そう言いながら、怪訝そうな表情を浮かべて僕を見る尊人。

「持ってないって」

呆れた声で言って、僕はポケットからサイフを取り出して彼に手渡した。

「うわぁ、マジかよ。全然、入ってないじゃないか」

小銭にしか入ってない僕のサイフの中身を見て、尊人を驚きの声を上げた。

「だから、そう言ったじゃないか」

語気を強めて、僕は尊人からサイフを取り返した。

僕の貯金が底をついたとき、彼女の転校を引き伸ばすことはできなくなる。そうなると、つぼみとも会えなくなる。

残りの貯金額を頭の中でざっくりと計算すると、六十万ぐらいだった。むだづかいを一円もしなくても、彼女と会えるのは二カ月しかない。