「願。悪いけど、五千円くれないか?帰りに、ほしいゲームがあるんだ」

軽く微笑んで、尊人は右手を差し出した。

「はぁ、意味わかんねぇ。なんで、僕がお前にお金をやらないといけないんだよ」

「だって願、いつも俺にお金くれてたじゃん」

尊人は、あっさりとそう言った。

たしかに今までお金への執着心はなく、五千円も一万円でも尊人にあげていた。でも、たくさんあった貯金が減りつつあり、僕とつぼみがつなげているのが、〝お金〟だということを知って前のようにむだづかいはできない。

「今日は、お金ないよ」

僕は、抑揚のない声で言った。

「はぁ、マジかよ。願の口から、『お金ない』っていう言葉が出るなんて、雨でも降るんじゃないのか?」

尊人は目を丸くして、驚いた顔で僕を見つめた。

「僕だって、お金がない日だってあるよ。それに、僕がお金を持ってないからと言って雨は降らないよ」

僕は、むっと眉間にしわを寄せた。

今日の天気は一日中晴れ模様で、降水確率はゼロパーセントだとテレビのニュースで報道していた。

九月中頃の最高気温は三十度近くまで上がると気象予報士が言ってたが、日が沈むにつれ、街の気温も涼しくなっていた。