「それで、今日はなんでちこくしたんだ?」

尊人が、明るい声で僕に訊いた。

「寝坊だよ」

僕は、一言そう言った。

僕が神社に一万円を納めて女神様に頼んでいるから、つぼみの転校を引き伸ばすことができているのに、尊人が彼女となかよくなるのは納得いなかった。

「もっと、早く寝ろよ」

「うるさい!」

僕は、不満そうな声で彼に言い返した。

夜おそくに帰宅する母親のせいで、僕の睡眠時間が少なくなっていたことにイライラが募っていた。しかし、それ以上に尊人とつぼみがなかよくなっているのがムカついた。

「最近尊人、広瀬となかよくないか?」

僕は、低いトーンで訊いた。

「そうか、べつに普通だろ」

尊人は、さらっと言った。

「じゃなんで、一緒に帰ったりするんだよ?」

僕は、語気を強めて訊いた。

学校の帰り道、僕のいないところで尊人とつぼみが楽しそうに会話している姿を頭の中で想像すると、黒い感情が湧き上がる。