「だったら、もう少し早く帰って来てよ。毎晩毎晩、お酒ばっかり飲んでないで」

僕は、少し強い口調で母親に言い返した。

母親は、もともとお酒を飲む人ではなかった。母親がお酒を飲むようになったのは、父親が海外の仕事が決まってこの家に帰って来なくなってからだ。

「ねぇ、お酒飲むのやめたら。体にも悪いし、意味がないよ」

僕は、やさしい口調で母親に言った。

「うるさいわね。子供が、親のやってることに文句言わないでくれる!」

母親の口調が、わずかに強くなった。

母親はお酒を飲むと、人が変わったように乱暴になる。口調から、態度まで。父親と一緒に暮らしていたときは家庭的でやさしい母親だったが、今はどこかさびしい気持ちをお酒でまぎらわしているように見える。