「すごいな」

僕は、感心したように言った。

「願。昨日、電子レンジにべんとう入れっぱなしだったでしょ」

「あ!」

母親にそう言われて、僕は昨日コンビニで買っていたべんとうを思い出した。

「願が食べないと思ったから、私が昨日の晩に食べたわよ」

そう言って母親は、テーブルの上に今朝の朝食を置いた。

豆腐のみそしる、白いご飯、きゅうりの漬け物。いつもと変わらない、母親の朝食が僕の目の前に並ぶ。

「ああ、べつにいいよ」

そっけなく言って僕は、豆腐のみそ汁をすすった。

母親が作るみそ汁は濃く、クセのある味だったが、僕は母親の作るみそ汁が好きだった。

「願。昨日の夕方、どっか出かけたの?」

「えっ!」

母親にそう聞かれて、僕は目を丸くした。

「出かけたけど、どうしてそう思ったの?」

僕は、わずかに首をかしげた。

「服がぬれてたからよ」

母親が、僕に視線を向けて言った。

確かに昨日は雨が降っており、神社の帰りは傘をさして帰ったと言っても、着ていた服が雨で濡れていた。