「あと、七万円納めるよ」

そう言って僕は、サイフから一万円札七枚取り出した。

「君、お金に余裕があるんだね」

僕から七万円を受け取った、女神様は目を糸のように細くして言った。

「まぁ、あるかもね」

僕は、抑揚のない声で言った。

「これで君から合計八万円を納めてもらったことになったから、彼女は八日間だけ引き伸ばせることができる。この八万円、すべて彼女のために消費してもいい?それとも、ほかになにか願うことがある?」

女神様は、僕から受け取った八万円を見せて訊ねた。

「庭の雑草がすごく伸びてるから、きれいにしてほしんだ」

「わかった。じゃ、この八万円の中から一万を引いて、それを草むしり代に消費にするよ。これで、彼女を引き伸ばせるのは、七日間になったけどいいね?」

「ああ。それでいいけど、ひとつ疑問がある」

僕は人差し指を立てて、低い声で言った。

「なに?」

女神様は、わずかに首をかたむけた。

「ほんとうに、彼女の転校を引き伸ばせることができるんだろうな?このまま、僕のお金を持ち逃げしたりしなよな?」

僕は、怪訝そうな表情を浮かべた。

彼女とこの先会えるのなら、どんな条件の悪い取引でも僕は女神と交渉をするつもりだ。しかし、この女神様の言葉がうそだったら、僕と彼女の関係はそれまでだ。

「そんな悪魔みたいなことはしないよ。君との約束は守るし、心配するな」

女神様は、笑ってそう言った。

「じゃあ、どうやって引き伸ばすんだ?」

僕は、むっと眉間にしわを寄せて訊いた。

「それは、明日になったらわかる」

そう言って女神様は、僕の前から姿を消した。

僕は両手を合わせてもう一度神社にお祈りしたあと、傘をさして慌てて家に帰った。