「広瀬は、神社でなにを祈ったんだ?」

ずっと気になっていた彼女の願いを、僕はかすれた声でつぼみに訊いた。

「知りたい?」

つぼみはいたずらぽっく笑って、僕を見つめた。

「うん、知りたい」

僕は、正直な気持ちを口にした。

「私が神社で祈ったのは、〝母親の病気が治って、三人ずっと一緒にいられますように〟って願ったの」

彼女は桜色の唇を開いて、神社で願っていたことを僕に伝えた。

ーーーーーー無理だ。神社に五千円納めたところでそんな願いはかなうわけがないし、ほんとうに神様でも存在しない限り、僕たちはこのまま別れてしまう。

つぼみと別れることを想像したら、なんだか急に僕の胸にさみしさが押し寄せた。

「神宮君。私、こっちだから」

そう言ってつぼみは、右の道を指さした。

学校を出てしばらく歩くと、つぼみとはこの別れ道でいつも別れることになっている。

「神宮君、また明日会えるといいね」

悲しく微笑んでつぼみは自転車にまたがって、家に帰っていた。

僕は彼女の姿が見えなくなるまで、呆然と見つめていた。