午後四時三十五分。学校の授業が終了し、僕とつぼみは自転車を押しながら自分の家へと向かっていた。

「ねぇ、神宮君。私のこと、怒ってる？」

学校を出て少し歩いたところで、つぼみが不安そうな声で僕に訊いた。

「え、どうして？」

僕はそこで立ち止まって、つぼみに訊いた。

「転校すること神宮君や尊人君に言わなかったから」

一歩僕に近づいて、つぼみが心配そうな顔で言った。

「べ、べつに怒ってないよ」

僕は、ぶるぶると首を振って正直に答えた。

怒ってはないが、僕は悲しかった。

「そう、よかった」

安堵のため息をこぼしたつぼみは、僕に背を向けて再び歩き出した。

「どうして、そんなこと僕に訊くの？」

開いた口が、思わずそんなことを訊いた。

「私たち、今日で別れるかもしれないんだよ。だとしたら、怒って別れるよりも、なかよく別れた方がいいと思って」

そう言って彼女は、笑顔で僕の方に振り向いた。