「願、今日も神社に寄って行くのか?」

背後から軽い口調が聞こえて、僕は振り向いた。

「尊人」

僕は、友人の名前を口にした。

彼とはケンカもしたが、お金以上に大切なもので結ばれている、僕の親友だ。

「そうだな、行くか」

明るい口調で言って、僕は勢いよく坂道を自転車でのぼった。

「おい、早くのぼってこいよ。尊人」

僕はまだ半分ぐらいしかのぼれていない、尊人を見下ろして言った。

「お金くれたら、早くのぼれるよ。願、お金くれよ」

「ざんねんだが、僕はもうそんなにお金に余裕がないんだ。じゃ、先に神社に行っとくぞ」

そう言って僕は、坂道をくだって神社に向かった。

二ヶ月前とは違って、僕にはお金がなかった。しかし、不思議と僕の気持ちはすがすがしい気分だった。