「つぼみ………」

僕はつぼみの背中を見ながら、愛する女性の名前を口にした。

「だって生きて別れたら、また願と会えるじゃん。でも、死んだらもう、こうして愛し合う関係にはなれないかもしれないでしょ。だったら、好きなまま別れよ」

軽い口調で言って振り返ったつぼみだったが、瞳からひとすじの涙が頬を伝って流れていた。

「つぼみ………」

大切な人の名前を口にしたのと同時に、僕の視界が涙でにじんだ。

「泣いてる姿、願には似合わないよ。泣いて別れるより、笑って別れよ」

そう言ったつぼみだったが、瞳から涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。

「つぼみ!」

僕はこの世界で一番好きな人の名前を叫んで、彼女を強く抱きしめた。

「僕、つぼみに会えてよかった。つぼみを好きになれてよかった」

女神様が言っていたとおり、別れが決まっている恋愛はとても悲しかった。けれど、こんなに好きな人と一緒にいられて後悔はなかった。

「私も、願が大好き。会えてよかった。好きになれてよかった」

つぼみも僕と同じ言葉を言って、強く抱きしめた。

あと、どれぐらいつぼみとこうして一緒にいられるかわからなかったけど、僕たちはただ、抱きしめ合っていた。