「とりあえず、食べてよ。約束でしょ」

「わ、わかったよ」

断ることもできないまま、僕はプラスチックの白色のおはしを手に持った。そして、てきとうに入っていた野菜をつまんでゆっくりと口の中に入れた。

「ん！」

口を上下に動かすと同時に、みずみずしい食感が僕の口の中全体にに広がる。初めて食べた野菜は………とてもおいしかった。

「どう、おいしい？」

「うん、うまい」

「ほらね、おいしいでしょ」

つぼみは笑みを浮かべて、僕にそう言った。

つぼみが僕のために作ってくれたという愛情も入っていたと思うが、それ以上に野菜がおいしく感じられた。

「よかった、別れる前に願がちゃんと私との約束守ってくれて……」

「えっ！」

つぼみが口にした言葉を聞いて、僕の心臓がドクンと音を立てた。

「やっぱり、二人で死ぬのはやめよ。生きて別れよ」

砂浜から立ち上がって、つぼみは夕日に照らされたオレンジ色の海を見つめて言った。