「悲しい気持ちもあるけど、私はそれ以上にうれしい気持ちもあるよ」

「えっ!」

涙声で言ったつぼみの言葉に、僕は目を丸くして驚いた。

ーーーーーーどうして?別れないといけないんだよ。どうして、ずっと一緒にいられないんだよ。どうして、うれしんだよ。別れないといけないのに?

つぼみと別れることを想像したせいか、僕の瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。

「神様のおかげて、私たちはこんなにも長く一緒にいられないんだよ。もし、あのとき願いをかなえてくれなかったら、デートもできてなかった。キスだってできてなかった。告白もできてなかった。そしてこんなにも、願のことを好きになれないまま別れていた。だから、うれしいの」
今、口にした言葉はお金の力ではなく、つぼみの本音だろう。

彼女と過ごした記憶がよみがえり、つぼみと初キスした僕の大切な思い出が浮かんだ。

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

つぼみの白い小さな手をぎゅっと握って、僕は関係を海の方まで引っぱた。

つぼみをこんなに好きになれたのはうれしい。人をこんなに愛せたことはうれしい。けれど、好きになった分、それ以上に別れが悲しかった。