「私があのとき神社に五千円納めたから、神様が願いをかなえてくれたのかな?」

「そう……かもな?」

つぼみの問いかけに、僕はうそをついた。

ほんとうはあの夜、僕が神社に一万円を納めた。だから、願いがかなったのだ。

「ふしぎだね。あのとき五千円納めていなかったら、私たちもう別れていたんだよ」

そう言ったつぼみだが、ほんとうは僕の一万円のおかげ。そう思うと、あのとき納めた一万円の価値が今になってわかった。

「お金を払って神社にまた願いをかなえてもらえるとしたら、願はなにを願う?」

つぼみはそこで立ち止まって、僕の目を見つめて訊いた。

つぼみの瞳は海面のように揺れており、なんだか悲しく見えた。

「この世から、野菜が消えてほしいって、願うよ」

僕は二ヶ月前と、同じ言葉をつぼみに伝えた。

この二ヶ月間で、父親とも会えた。家族で出かけることもできた。そして今、つぼみとデートができている。お金はなくなったけれど、僕の願いはすべてこの二ヶ月間でかなえられた。