「そうなんだ」

僕はこのふしぎな現象を知っていたせいか、驚きはなかった。

次の入院先の病院がいっぱいなのも、母親の体調が急によくなったのも、そして、つぼみの転校が先に伸びてるのも、すべて神社にお金を納めて女神様に願いをかなえてもらったからだ。お金と引きかえに、僕はつぼみと一緒にいる時間を手に入れた。

「でも、お母さんの体調がまた悪くなって、あと十日間ぐらいしかこの街にはいられないんだ」

「えっ?」

しんみりと言ったつぼみの言葉を聞いて、僕の心臓がドクンとなった。

「ようやく転校先の病院が空いて、お母さんはその病院で診てもらうんだ。この小さな病院で診てもらうより、大きな病院で診てもらった方がいいから」

明るい口調で言ったつぼみだったが、表情は悲しそうだった。

「そうなんだ……」

つぼみの言葉を聞いて、僕はひとことだけ言った。

つぼみの母親にとってこの街を離れて大きな病院で診てもらうということはうれしいことなんだが、僕はそれにすなおによろこぶことができなかった。それはきっと母親が大きな病院で入院すると同時に、つぼみも僕の前から離れてしまうだろう。

ーーーーーーしかたがないじゃないか。元々、つぼみとは二カ月前に別れているはずなんだから。悲しむ感情より、これだけ好きなつぼみと一緒にいられたことをよろこぶべきだろう。

自分にそう言い聞かせるが、つぼみと別れるとなると自然と悲しくなる。