「やっぱり、外はすごく暑いね」

海の近くのバス停で降りて、つぼみは額に手をかざして言った。

冷房が効いていたバスから降りると、うだるような暑さが襲った。

「願君、見て。海がきれいだよ」

つぼみが指さした方向に視線を向けると、バスの窓から見たときよりも、あざやかな青い海が僕の瞳に映った。それと同時に青い海の上を飛んでいるカモメや、白い砂浜が見える。

「海に沈む夕日って、美しんだろうね」

海風が吹いたせいか、つぼみはかぶっていた白色のつば広ぼうしを軽く押さえた。

「見たことないの?」

「病院からだとあるけど、海辺からはないんだ」

そう言ってつぼみは、病院に視線を向けた。

「お母さんの体調、また悪くなったんだ」

軽い口調で言ったつぼみだったが、表情はなんだか悲しそうだった。

「最近、母親の体調がよくなって、次の入院先の病院もいっぱいで、それで私の転校が伸びたりして。ふしぎなことばっかりで、ちょっとびっくりしてるんだ」

病院から海に視線を戻して、つぼみは笑顔を浮かべた。