「広瀬、もうすぐ着くぞ」

僕の肩に頭をのせてきもちよさそうに寝ている、つぼみに声をかけた。

バスに乗って最初の数分間は彼女としゃべっていたが、いつのまにか沈黙が続いた。そして気がついたら、つぼみは僕の肩に頭をのせて寝ていた。つぼみと話が続かなくなったときは困ったが、あまり会話のないデートも僕はきらいじゃなかった。

「広瀬、もうすぐ着くぞ」

寝ている彼女の体をやさしく両手で揺らして、僕はもう一度つぼみに声をかけた。

「ん?」

僕の声が聞こえたのか、つぼみはまだ眠たそうな目をこすりながら起きた。

「広瀬、着いたぞ。窓から、海が見えるぞ」

そう言って僕は、窓に指さした。

「え、ほんと」

僕の言葉を聞いて、つぼみは一気に目をさました。そして、窓の外に視線を向けた。

「ほんと、きれい」

バスの窓から見えた海の景色を見て、つぼみはうっとりした表情を浮かべた。