「おはよう」

和室からリビングに移動して、僕は目の前にいる母親にあいさつをした。

「おはよう」

母親がテレビに映っていた天気予報のニュース画面から、僕に視線を移して言った。

母親の服装は昨日と違って、薄着に変わっていた。半袖のブラウスに、薄いピンク色のガチョウパンツ。母親の服装を見て、やはり今の季節は夏になっていることがわかった。

「ほんと、今日は暑いわね」

そう言って母親が再び、テレビに視線を移した。

「今日から十日間、気温が四十度近くまで上がるらしいわよ。九月なのに、まるで夏のような暑さわねぇ」

そう言いながら母親は、不思議そうな顔を浮かべた。

母親が言った言葉を聞くと季節は夏になったのではなく、街の気温が夏のように高くなったようだ。

「私は、もう会社に行くからね。朝ごはんは、自分で作って食べてね」

そう言って母親は、水色の手提げバックを左手に持って家を出た。

時間ギリギリなのだろうか、慌てて家を出て行く母親を見送ったあと、僕は台所に向かった。