「じゃあなんで、神社に行くんだよ?」

尊人が、不平をこぼした。

「夏休み明けだし、絶対長ったらしい先生の話があるだろ。そんなの聞きたくないからさぁ、神社で休んでから行こうって思ってなぁ」

「それって、ただのサボりじゃないか?神社で休んだら、バチが当たるぞ」

「だいじょうぶだよ、神様なんかいないから。もし存在していたら、とっくに僕の願いは叶っているはずさ」

自信満々に言って、僕は神の存在をきっぱりと否定した。

「そんな気持ちだから、神様も振り向いてくれないんじゃないのか?」

尊人は、呆れた表情を浮かべて言った。

「神様に、人の気持ちは見えないだろ」

僕は、あっさりと言い返した。そして、ここで右に曲がった。

僕の視界に、赤い鳥居と見慣れた神社が数十メートル先に見えた。僕は目に見えている神社に向かって、まっすぐ自転車をこいだ。


「着いた!」

僕は神社の入り口に自転車を止めて、前カゴに入れていたカバンを手に持った。

神社にある大きな樹木の間から日差しが差し込み、石段に僕の黒い影が映る。