「願、ちょっといいか」

声のした方に視線を向けると、尊人が僕のことを呼んでいた。

「神宮君、時間かかりそう?」

「へぇ」

ちらりと尊人に視線を向けたあと、すぐに僕はつぼみの方に視線を向けた。彼女が、心配そうな顔で僕を見つめている。

「いや、わからないけど……?」

僕は、首をわずかにかたむけた。

「私、外で待ってるから。今日は、二人で帰ろうね」

つぼみの半ば強制的な言い方にに、僕は「わ、わかった」と言った。

つぼみが何時まで僕のことを待ってくれているのかわからなかったが、心臓の鼓動がドクドクと音を立てていた。

僕がぼうぜんとつぼみが教室から出て行く後ろ姿を見ていると、「願、ちょっといいか?」と、尊人にもう一度呼ばれて、僕ははっと我に返った。そして、「ごめん」と言って、僕は早足で彼のところまで向かった。