「けっきょく、どれだけお金を神社に納めてもつぼみと長くいても、迎える最後の気持ちは悲しんだね」

開いた口から出た僕の声は、かすかにふるえていた。

つぼみのためにたった二ヶ月ちょっとで全財産を失った。お金を失った喪失感もあったが、これだけお金を使っても、つぼみは僕の前から去ってしまう、喪失感の方が辛かった。

「そりゃ、好きな人と別れるからね。結ばれない恋ほど、悲しいものはないよ」

女神様は、そっけなく言った。

「そうか……」

僕の口から、ため息が漏れた。

もう少しお金があったらという思いもあったが、けっきょく迎える気持ちは悲しいだけなんだということにすぐに気がついた。

「でも、なんかすがすがしい気分だよ」

僕は、口元をゆるめて言った。

「どうして?」

女神様が、不思議そうな顔で僕を見た。

「だって、つぼみと僕はもう別れているはずなんだよ。でも、女神様のおかげて、こんなにも長く好きな人と一緒にいられたんだよ。そして、あと十日間もいられる。こんな、うれしいことはないよ」

明るい口調で前向きなことを言ったが、僕の瞳は哀しい色が浮かび上がっていた。

ーーーーーー明るく考えても暗く考えても、一緒なんだ。あと、つぼみは十日間しかいられないんだ。それなら、明るく考えた方がいいじゃないか。笑顔で、別れた方がいいじゃないか。

好きなつぼみと別れるのは辛かったが、僕は前向きな方に考えた。

「その反応だと、もう後悔はないんだね」

「うん」

女神様にそう訊ねられて、僕は首を縦に振った。

「もう一度言うけど、彼女はもう君のことを好きになってるよ。楽しいデートができるといいね」

「うん」

まだ実感がわかなかったが、つぼみが僕のことを好きになってくれていると思うと、顔が赤くなる。

「ありがとう、今まで僕の願いをかなえてくれて」

「そんなお礼は、いらないよ。私も、楽しかったし」

そう言って笑顔を浮かべた女神様の表情が、僕の瞳に悲しく映った。