「私と別れるぐらいでこんなに泣いていたら、彼女と別れるときに涙が出なくなるよ」

女神様が口にした言葉を聞いて、つぼみと別れる十日後の未来が僕の頭の中に浮かび上がった。

「やっぱり、最後は悲しんだね」

「そりゃそうよ。ほんとうは彼女は二ヶ月前に転校して、君の前からいなくなってるのだからね。でもお金を使って、悲しみの感情と彼女の転校を先に先へと引き伸ばしていただけだからね」

「そうだけど………」

あと十日間しかつぼみといられないとわかっているからか、僕の声が震えた。

僕のお金がなくなったのと引きかえに、つぼみと長くいられたことはうれしく感じた。しかし、どれだけつぼみのことが好きだったとしても、別れることが決まってるから涙が流れる。

「……別れるときがきたの」

「えっ!」

「彼女と別れる、悲しいときがきたの」

女神様はできるだけやさしい口調を意識して言ったが、その事実が悲しかった。