近くのガレージに車を停めていた父親が、僕たちよりも数分おくれて公園の芝生に足をふみいれた。

「思ったよりも、早く着いたなぁ」

「まぁ、そんなに遠くないしね。今、午前十一時二十三分だよ」

そう言って母親が、左手にはめていた腕時計に視線を落とした。

「昼ごはん、サンドウィッチだよ」

母親が、僕と父親の顔を交互に見て訊ねた。

「いや、ちょっと待ってくれ。その前に、願と話をさせてくれ。ずっと会話をしていなかったから、話がしたいんだ」

「えっ!」

父親の口から出た言葉を聞いて、僕は驚きの声を上げた。

「昼食を食べる準備をしといてくれ。その間、俺は願としゃべってるよ」

父親は母親に視線を向けたまま、そう言った。

「お父………」

そう口にした僕の声が、かすかに震えていた。

父親と二人で会話するのは小学生以降なかったせいか、きんちょうした。それでも、久しぶりに父親と話せることはうれしかった。

「わかったわ」

「すまないな」

母親の苦笑いを見て、そう言った。