「ほんと、なつかしいね」

母親はむかしを思い出したのか、なつかしそうに目を細めた。

「そうだね」

そう言って母親に視線を移すと、彼女の横顔から涙が頬を伝って流れていた。

「お母さん………?」

開いた口から出た僕の声は、震えていた。

「むかしは、よく家族で行ったけ?なつかしい、思い出だね」

「今も、家族だよ」

「えっ!」

「今も、家族だよ。どんなに状況が変わっても、僕たちはずっと家族だよ」

正直に自分の想いを母親に口にしたのが恥ずかしかったのか、僕の頬がかすかに赤くなった。

「そうだね、私たちはずっと家族だね」

涙を手の甲でぬぐって、母親はそう言った。

「久しぶりだなぁ、家族でこの場所にまた来られるなんて」

そのとき、後ろから父親の声が聞こえた。振り向くと、父親がゆっくりと公園に向かってくる姿が僕の瞳に映った。

「運転、おつかれさま」

母親が軽くお礼を言うと、父親は「いいよ」と、照れくさそうに言った。