「お父さん、どこへ出かけるの?」

「願の行きたいところに、行ったらいいぞ。俺は、久しぶりに家族と過ごせるだけで、十分幸せだからな」

笑顔を浮かべた父親の口から、〝家族〟という言葉が出た。

僕のかなえた願いで一周間は父親と家族でいられるが、それ以降は、会えなくてなってしまう。そう思うと、このまま時間が止まってほしいと思った。

ーーーーーー僕たちは、ずっと家族だよ。

一周過ぎてもまたお父さんに会えない日々が続いても、僕たち三人は、ずっと家族だよ。

久しぶりに感じる、〝家族の愛情〟に心が震えた。

「……公園に行きたい」

「えっ!」

「むかし家族で行った、公園に行きたい」

開いた口から、小さな声で僕は父親に行きたい場所を伝えた。

「公園か、なつかしいなぁ」

父親は僕と公園に行ったときのことを思い出しているのか、なつかしそうに目を細めた。

「たしかに天気もいいし、私も願と一緒で公園がいいなぁ」

背後から母親の声が聞こえて、僕は振り向いた。振り向くと白色のハットを頭にかぶり、薄く化粧をした母親の姿が僕の目に映った。

こんなおしゃれをした母親を目にするのはほんとうに久しぶりで、僕は呆然としていた。

ーーーーーーずっと、この明るい家庭が続いたらいいのになぁ。

一秒一秒失っていた家族の愛情を経験していくにつれ、この幸せが限られていることに悲しくなった。